プログラム関連の法律用語を調べてみる & 日本語の造語性能を考える

2024-12-04

Advent Calendar も4日目となりましたね。

こんにちは。名古屋大学法学部B1のバーナムと申します。B1の中ではトップバッターになりました。

jackのメンバーの中で、法学部というのはかなり珍しいようですね。 プログラミング等とはかけ離れた領域の人間が、手取り足取り助けられながら、無謀にもアプリ開発をさせていただいております…

さて、すでに述べたように、私は法学部に所属しているということで 法律等に絡めたことを書ければいいなと考えていたわけですが プログラム関連のカタカナ語が、法律用語でどのように表記されているか見ていくことにしました。

というわけで法学部のトレードマークである(多分)こちらなどを活用して調べていきましょう。

調べた法律名

*一般的に知られている名称で表記しています。

  • 不正アクセス禁止法
  • プロバイダ責任制限法
  • 個人情報保護法
  • 著作権法
  • 公文書管理法
  • 公職選挙法(2024年は選挙多かったし、選挙でのSNSの効果が話題になってたし)

法律のどこを見ればわかるの?

*より正確なことは記事末尾「ちなみに」のリンクをご覧ください。

法律の文章をほとんど読んだことがない人はわからないと思うので説明。 用語は原則、それぞれの法律の最初の方の条文で定義されています。 (たまに他の法律で定義されているってことで、そっちに投げてたりするけど。) なお公職選挙法については 「十三章 選挙運動」 の部分を参照しました。

漢字の熟語で表記されている用語

*凡例 : 法律用語…日常用語またはプログラム用語 *プログラム関連以外の意味を含む法律用語もありますが、この記事ではプログラム関連の用法に限定して説明しています。

  • 電子計算機…コンピュータ

      コンピュータとはいっても、プログラムを処理する電子回路のみのことを指します。 キーボードなどの入力装置、スクリーンなどの出力装置は含まれません (パソコンを例に)。

      • 特定電子計算機…インターネットに接続しているコンピュータ

  • 電磁的記録…データ(電子データ)

      だいたい括弧書きで「電子的方式、磁気的方式その他の知覚によって認識することができない方式で作られた記録」みたいな詳細な定義がされています。長いね。 それはそれとして、データっていう言葉も説明するのは難しいですよね…

  • 識別符号…アカウントなど

      アカウント名、パスワードのような、ユーザーを識別できる情報のことです。 シリアルナンバー、IPアドレスなども含まれそう?(筆者の調べでは不確実)

  • 通信端末機器…(デジタル)デバイス

      データの送受信が可能なデバイスのことを言います。

      括弧書きなどで、入力装置(キーボードとか), 出力装置(スクリーンとか)を含むという説明が付記されている場合も多いですね。

  • 電気通信回線…インターネット回線

      物理的なケーブルとは異なりそうです。 インターネット回線だけでなく、電話回線なども総合的に含みます。

      • 電気通信回線設備…ネットワークケーブル

  • 特定電気通信…インターネットサービス

      ウェブページとかSNSとか。 不特定多数の人が閲覧、利用できるサービスのことですね。

      • 特定電気通信設備…ウェブサーバーなど

  • 技術的保護手段, 技術的利用制限手段…コピーガードなど, アクセスコントロールなど

      著作権法の用語。 アクセスコントロールについては、映像の視聴などを制限するという文脈です。 (海賊版のゲームソフトをプレイ不可能にするなど。)

こんなのわかるか

  • 電子情報処理組織…コンピュータネットワーク?

      コンピュータないしインターネットと接続されているいろいろなシステムのこと…だと思う。 定義を読んだり調べたりしても、筆者は明快な答えを見つけられませんでした(有識者求む)。

  • 特定電気通信役務提供者…プロバイダ

      長すぎる。 一般的に「プロバイダ責任制限法」と呼ばれていますが、「プロバイダ」という用語はこの法律の正式名にも条文にも一切登場しません。残念ながら。

意外とカタカナのまま使われているものもある

  • データ, データベース

      「電磁的記録」をデータのことであると説明しましたが、比較的新しい法律などではカタカナ語のままだったりもします。

  • ウェブサイト

      語源を考えると完全に比喩的な表現なのに、そのまま使うのかという感覚がありますね…

  • インターネット

      「データ」と同じで、説明がまず難しいからそのままなのも仕方ない(と思ってます)。

  • アクセス

      プログラム関連の文脈で使われる場合は、他の語と組み合わせられていることが多いです。 「不正アクセス」,「アクセス管理者」,「アクセス制御」みたいに。

  • プログラム

      この記事で、「プログラム関連」という形で多用している言葉ですね。 実は法律でもカタカナのままだった。

  • コンピュータ

      「電子計算機」と説明しましたが、ごく稀にはカタカナで用いられているみたいですね。

漢字とカタカナの融合系

  • 電子メール, 電子メールアドレス

      日常ではもっぱら「メール」, 「メールアドレス(メアド)」って言うよね。

こんなのわかるかPart.2

  • 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト…リーチサイト

      リーチサイトとは、海賊版のコンテンツを入手できるウェブサイトへのリンクをまとめ、そこに誘導するウェブサイトのことです。 確かに意味は表現されているけど…長すぎるし、漢字とカタカナの混在はやっぱり気になる… *ちょっとプログラム関連とは遠いかもしれないですね。

日本語の造語性能について

というわけで、いろいろな法律用語が出てきましたね。 ここまでは、ある程度調べれば出てきそうな感じのn番煎じの記事なわけなんですが この章段で類似した記事と差別化を図ります。

ちょっと分かりにくくなってたりもしますが、ここまでのプログラム関連の言葉を漢字に変換できるのは、日本語の造語性能の力ですね。 「憲法」, 「権利」, 「個人」など、法学において重要な基本用語も、文明開化に伴って当時の人が概念を理解して作った言葉です。

この造語性能のおかげで、日本人は様々な海外由来の理論や概念などを、母語である程度理解できるわけですね(漢字の意味に囚われて誤解が広まってたりもするけど)。

漢字を組み合わせて新しい言葉を作り、人々が新しいものを理解するのに役立てる。これは機械翻訳にはなしえない技だと思います。

(なんか説教くさくなりました。ごめんなさい。)

ちなみに

法律などを簡単に検索できるシステムがあります。 紹介した用語がどこに出てくるかなど知りたければ活用してみてください。 https://laws.e-gov.go.jp/

その他参考: https://note.com/kou_mori/n/n580c2753d630 *一部用語の説明は、jack-blog筆者が調べた過程で、私見に基づき改変しています。 https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column052.htm (「用語の定義」の詳細) https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column004.htm https://ja.wikipedia.org/wiki/コンピュータ https://ja.wikipedia.org/wiki/電磁的記録 https://www.soumu.go.jp/main_content/000883501.pdf https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/japanese/misc/NetWork-Manual/souron.html https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h30_06/pdf/r1411529_04.pdf https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column106.htm https://www.mext.go.jp/content/20200306-mxt_hourei-000005016_02.pdf

なお、筆者は2024/12/4の時点でB1です。法律知識が浅い部分も多いため、将来的に内容の修正を行う可能性があります。

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